ひま草子

何か思ったことや、知ったことを色々と書いていこうと思います

【 プレミアリーグのクラブの拡大状況①】MyClub LiverPool FC ② 過去10シーズンの収益から成長を見る

今回は前回の続きとしてリヴァプールFCの過去10シーズンの収益から成長度合いを読み解いていこうと思います。

前回の記事は↓からどうぞ。

https://shotarohj182242.hatenablog.com

それでは早速見ていこうと思います。

過去10シーズンのデータ

f:id:shotarohj182242:20200509231503p:plain

試合の日⇒マッチ収益

放送⇒放映権料などのメディアによる収益

商業の⇒商業収入

となっています。f:id:shotarohj182242:20200509231514p:plain

総収益はここ10年で約3倍となっており、急成長中の産業であることが分かります。

さて、ここからどこが大きく伸びているのか、どこが転換期となっているのかを分類ごとに見ていきましょう。

メディアによる収益

前回の記事でも説明した通り、現在の収益の内の一番多くを占めているのは、放映権料などによるメディアによる収益です。

特に13-14,14-15シーズンでの価格の跳ね上がりはすさまじく、08-09から12-13シーズンにおけるメディアによる収益の平均と比べると圧倒的な差が存在します。

約2年で2倍近い収益の伸びが出ているだけでなく、17-18シーズン以降は250万ポンドを超える収入を記録しています。

一体なぜ13-14から唐突に値上がりしたのでしょうか。

1つは、プレミアリーグの放映権収入が拡大したことにあります。プレミアリーグ自体の放映権料が増え、収益のプールとしての拡張がされたことで、分配される分が成績如何にかかわらず増収しました。無論「BIG6」の一員であるリヴァプールFCは成績が多少悪くても試合自体に需要があるため放送回数はある程度確保されるため大幅な変異はありません。なぜプレミアリーグの放映権料がこの時期に高騰したかはまた別の機会に詳しく説明したいと思います。手元に詳しい資料がないためもう少し時間をください(^_^;)

2つ目はデータとして残っているわけではありませんが、選手の価値のインフレが原因と思われます。2013年にネイマールバルサに移籍した際の移籍価格は100億円を超える当時では破格の値段で取引されました。さらに、ここ数年では100億円に近い価格での移籍も増えており、かつてはフォワードの選手しか高値で取引されなかったものが、現在ではディフェンダーやキーパーといったポジションに隔たりなく価格が上昇しています。選手の市場価格が上がることなど当然なく、サッカー市場全体の価値も上がっていることになります。そうなれば、放映権料自体も吊り上がります。このようにして、選手の移籍なども放映権料に影響を与えているのではないかと推測されます。

3つ目は日本での地デジ化やインターネットを使用したライブ配信スマホの普及など、試合の放送,視聴環境が整ってきたことが影響しているのではないかと考えられます。多くの国で配信することができるようになるだけでなく、手ごろに試合を見ることができる環境ができたことで、コアではない新規ファンなどの呼び寄せに成功したのではないだろうか。

3つ目は少し安直な考えだが、上記のような理由が放映権料の増加に影響を及ぼしているのではないかと考えられます。特に、2,3の理由は1の理由の原因のようなものではありますが...。そもそも、プレミアリーグブンデス,リーガ,セリエAよりも成長しているリーグであり、そのサッカーの市場価値は常に上がり続けています。その追い風もリヴァプールFCだけでなくプレミアリーグのチーム全体に影響を及ぼしているのではないでしょうか。

商業収入

商業収入はここ10年近くで約3倍に高騰しています。

18-19シーズンには210万ポンドにまで上昇しています。これほどの収益を生んだ原因は何なのでしょうか。

1つ目は市場の拡大です。先ほどのメディアでの発信にも伝えたように現在、世界中でどこでもいつでも試合を見れる環境が整っていることで知名度はヨーロッパの垣根を超えた存在になっています。そこで、リヴァプールの商品を売り出すためにオンラインショップの拡大や小売りパートナーの開拓に力を入れているようです。特に現在は、マレーシアやタイといった東南アジア諸国への売り出しに力を入れているようです。そこでの業績が上がったことが商業収入が増えた原因となっているようです。オンラインショップによる注文の出荷場所は190か国以上にもなっています。

2つ目は企業との適切な新規契約、契約更新などをおこなったことです。9つの新しい商業パートナーを取り入れたことです。それにより、広告収入としての幅が広がり、収入が増えているようです。AXAとは公式トレーニングパートナーシップを結びました。このように、新しい契約を結び常に新しい契約を締結することも収入の増加につながっているようです。

3つ目は成績の向上です。チャンピオンズリーグプレミアリーグでの成績が好調であることが原因の一つとなっています。これにより、ユニフォームなどのグッズの売れ行きが上がっていきます。リヴァプールFCの公式ショップには18-19シーズン期間の一年間で100万人を超える客が来ています。

4つ目はSNSの発信です。リヴァプールSNSでの情報発信を重要にしており、この影響で知名度だけでなく、ショップの広告もできることで、単純接触効果が期待され多くの客をオンラインショップに引き込むことができます。1300万人がツイッターをフォローし、250万人がYouTubeチャンネルをフォローしています。この数はプレミアリーグの中では最高でその力の入れ具合が見て取れます。

このように全ての分野で新しい戦場の開拓を行うことが商業収入を伸ばす要因となっているようです。対外的な契約を増やし、収益を増やすことでクラブのインフラや地元に投資をすることで、その投資が還元され地元からも収益が得られるという構図が出来上がっているように見えます。地元をないがしろにせず、それでもさらに利益を得られる国外に目を向けるというシステムは非常に面白いものがありますね。

マッチ収益

 マッチ収益はここ10年で2倍程度しか成長していません。全体が3倍近くに成長しているのに、この分野はそれに伴っていないのは一体なぜでしょう。マッチ収益とは、スタジアムでのチケット料金や食べ物といった試合の当日のアンフィールドでの利益ということになります。

たびたびおこなわれる拡張工事などにより、収容人数は増えているため、マッチ収益もそれに伴い増えています。また、チケット料金自体の値上がりも影響を及ぼしているでしょう。しかし、スタジアム自体が他のビッグクラブと比べて小さいため、新たなアンフィールドを作ることが計画されています。現在のアンフィールドの平均入場者数の収容率は98.4%とかなりの高水準を保っているので、新しいアンフィールドができた際の入場者数がどこまで行くのか、マッチ収益がどれほど増収するかが非常に楽しみです。

 総括

今回は、収益を各分野ごとに詳しくみていきました。収益の増収はここ10年ですさまじい勢いがあります。一番の要因はやはり、市場が世界に拡大したという点でしょう。選手の故郷もイングランドにとどまらず、放送される国もヨーロッパの垣根を超えています。このように、新しい市場の開拓が実を結んだ結果が今の増収につながっているのではないかと思われます。

次回は、「どのような支出の内訳か」という記事を書こうと思っていましたが、それは少し置いておき、以前からサッカー界では有名なマンチェスターユナイテッドの収益状況を見ていこうと思います。これはかなり面白い情報が得られそうなので自分でも楽しみです。

【 収益から見る規模の拡大状況①】MyClub LiverPool FC ① 18-19シーズン編

昨今凄まじい勢いで成長しているプレミアリーグマンチェスターユナイテッド,チェルシーなどサッカーを知らない人、見ない人でも知っている人は多いだろう。まさに、リーグとしての知名度がその規模も物語っている。ここ数年で、アジアに対するプレミアリーグマーケティングもかなり増えてきている。

 

客観的に規模を証明するにはどのように説明すればよいだろうかと考えたときに、財務状況から見てみようと考えた。そこで今回、『収益から見る規模の拡大状況』ということで財務会計の観点からクラブの状況や規模を見ていきたいと思う。

 

サッカーを見ていてもチームの強弱しかわからない。そのクラブがどのようなシステムで回っているのか将来性やポテンシャルを見るには財務状況を知ることは重要である。

実際の財務状況はどのようなものなのだろうか。今回はその第一回として我がmyclubであるリヴァプールの最新決算状況も含めた、様々なデータからクラブとしての規模の拡大状況について調べる。

 

今回は18-19シーズンの最新財務状況からどのような1年であったか、経営面で強化した点などを見ていきたい。

早速2018年6月から2019年5月までの年次決算から見ていきたいところだが、それを見る前に、18-19シーズンのリヴァプールの戦績を知る必要がある。

リヴァプールFCの18-19シーズンにおける戦績

フレンドリーマッチ(総試合数:6)→4勝1分1敗

インターナショナルチャンピオンズカップ(総試合数:3)→2勝1敗(5位/18チーム)

プレミアリーグ(総試合数:38)→30勝7分1敗89得点22失点⇒総合勝ち点97(リーグ2位)

カラバオカップ(総試合数:1)→1敗

FAカップ(総試合数:1)→1敗

チャンピオンズリーググループリーグ(総試合数:6)→3勝0分3敗9得点7失点⇒総勝ち点9

チャンピオンズリーグラウンド16 対バイエルン・ミュンヘン→3-1,0-0⇒3-1

チャンピオンズリーグ準々決勝 対ポルト→2-0,4-1⇒6-1

チャンピオンズリーグ準決勝 対バルセロナ→0-3,4-0⇒4-3

チャンピオンズリーグ決勝 対トッテナム・ホットスパー⇒2-0

 

以上が18-19シーズンのリヴァプールの全試合の成績である。

特に、チャンピオンズリーグ1位,プレミアリーグ2位は歴代でもかなりの好成績といえるでしょう。

 

さて、これらの結果もふまえて18-19シーズンのリヴァプールの決算状況を見てみよう。

リヴァプールの決算状況(18-19シーズン)

総売上5億5300万ポンド(790億7900万円)

 メディアによる収益2億6100万ポンド(373億2300万円)

 商業収入1億8800万ポンド(268億8400万円)

 マッチ収益8400万ポンド(120億1200万円)

売上高の増加量8000万ポンド↑ (114億4000万円)

利益4200万ポンド (60億円)

*1ポンド143円として算出

各収益における前年比

総売上高の前年比はおよそ+1億ポンド(143億円)!!!

その他の前年比は下の通り。

メディアによる収益⇒+4000万ポンド

商業収入⇒+3400万ポンド

マッチ収益⇒+300万ポンド

メディアによる収益⇒2億6100万ポンド

スポーツ業界の最も重要な収入源は放映権料である。

メディアによる収入の多くは放映権料であると考えられる。プレミアリーグでは、分配制度による放映権料の分配を行っている。18-19シーズンのプレミアリーグからの分配金1億5242万ポンド(約212億円)となっている。残りの約1億ポンドの詳細は分かりませんが、チャンピオンズリーグなどプレミアリーグ以外の試合による放映権料の分配金だと推測される。

リヴァプールSNSにもかなり力をいれている。YouTubeチャンネルはプレミアリーグの中で一番多いフォロワーとエンゲージを有しており、インスタグラムTikTokなどにも進出している。このような、試合中継だけでない様々なメディアへの進出は新規のファンを増やすことにも繋がる。

商業収入⇒1億8800万ポンド

商業収入の多くは、スポンサー収入グッズ収入が多くを占めている。

保険会社AXAとの取引でスポンサー料が増えたことによる大幅な商業収入の増収が発生したことを公表している。

商業収入は17-18シーズンのチャンピオンズリーグ2位という結果やサラーやマネ、ファンダイク、アリソンといった各ポジションにスター選手を持ってきたことによりユニフォームなどの関連グッズが売れたことが大きな要因になっているのではないだろうか。また、成績が上がればその分スポンサーも投資しやすい。そのような良好なチーム状況が商業収入に反映されたのではないだろうか。

マッチ収益⇒8000万ポンド

マッチ収益はスタジアムに足を運んだ人によるチケット料金のことである。スタジアムは今後改修工事に入り、さらなる増収が見込めるため今後に期待である。

利益⇒4200万ポンド

前年度はサッカークラブ世界最高額である1億2500万ポンドを計上したが、その1/3ほどとなっている。

17-18シーズンの活躍や18-19シーズンの活躍により選手の契約更新に支出が割かれていると考えられる。とはいっても人件費率は70%程度ですので、あくまで前年よりも増えているという見方で構わないだろう。実際、16-17シーズンの利益は4000万ポンドなので、いつも通りという見方もできるだろう。

 

今回は18-19シーズンのリヴァプールの収益について紹介した。次回は、過去の収益総額や内訳から規模の拡大状況を推移とともに見ていく。